プログラミング言語の一種である「PHP」は、構文のシンプルさとデータベース連携のしやすさといったメリットがあり、Web開発に多く用いられます。一方で、パフォーマンスの制限や正しく使わないとセキュリティホールができるといった課題もあります。
そこで役立つのが、Web開発の補助ツールとなる「PHPフレームワーク」です。当記事では、PHPフレームワークを活用するメリットや注意点、おすすめのPHPフレームワークを厳選してご紹介します。
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PHPフレームワークとは?
PHPフレームワークとは、Web開発に特化したプログラミング言語「PHP」を効率よく活用するためのソフトウェアです。PHPフレームワークには、利用機会の多いコードが集約されているほか、プログラム開発全体をサポートするさまざまな機能が搭載されています。
まずはPHPで作れるシステムの具体例とPHPフレームワークを活用するメリットを説明します。
PHPを活用して出来ること
PHPを活用すれば、以下のようなWebシステムを作成できます。
- お問い合わせフォームの作成:顧客とのやり取りがスムーズになる
- データベースとの連携:取得データを別の機能に応用できる
- 検索機能の作成:利便性向上と顧客のニーズ把握が見込める
- ブログの作成:既存テンプレートで簡単に作れる
- グループウェアシステムの作成:チーム全体で各種情報を共有できる
- ECサイトの作成:会員情報の登録、オンライン決済なども実装できる
- SNSの作成:ユーザー同士で使えるオリジナルのSNSを開発可能
PHPフレームワーク活用のメリット
Web開発にPHPフレームワークを用いるメリットは以下の3つです。具体的に見ていきましょう。
- Web開発効率が向上する
- コードの書き方を統一できる
- 安全性が高まる
Web開発効率が向上する
PHPフレームワークには、よく開発される機能がカンタンに実装でき、コードをゼロから書く必要がなく、Web開発にかかる時間・労力といったコストを削減できます。
また、フレームワーク独自のテンプレートを使えば、機能やデザインの変更や追加がしやすいのもメリットです。
コードの書き方を統一できる
Web開発をチームで行う場合、複数のエンジニアでコーディング業務を分担することになります。このときPHPフレームワークがなければ、コードの書き方はエンジニアごとに違ってきます。その結果、作業効率や開発スピードが落ちてしまったり、不具合への対応に時間がかかったりするなど、デメリットに繋がります。
その点、PHPフレームワークを導入すれば、チーム全体で共通のコードを使用できます。これにより、システムの改善や修正がしやすくなり、メンテナンスにかかる時間や労力をカットできるでしょう。
安全性が高まる
PHPフレームワークに沿って開発を行えば、ゼロから作成するときと比べて不具合や予期せぬ挙動が発生しにくくなります。加えてセキュリティ対策を講じたコードがすでに組み込まれている場合も多く、高い安全性も期待できるでしょう。
PHPのフレームワークによっては、発生したエラーを検知して復旧・ログ作成などの処理を行うエラーハンドリング機能が搭載されています。そのためバグの発生やシステムトラブルを防ぎ、システム開発の課題でもある「脆弱性」の解決につながるでしょう。エラー検知等の機能は、フレームワークの種類によって異なるため、事前にきちんと確認することが大切です。
PHPフレームワーク9選とおすすめ理由
ここからはPHPフレームワークを9種類に絞って紹介します。それぞれの特徴やおすすめする理由もまとめているので、フレームワーク選びの参考にしてみてください。
1.Laravel
2011年にリリースされた「Laravel」は、Webアプリケーション作成などに用いられるフレームワークです。競合分析ツールを提供するWappalyzerの調査によれば、2023年のWebフレームワークのシェア率第5位にLaravelがランクイン。世界規模で人気があるフレームワークです。
具体的には、以下のWeb開発に利用できます。
- Webアプリケーション開発:タスク管理など
- 業務システム開発:勤怠管理システムなど
- Webサイト制作:決済システム含むショッピング・予約・会員サイト
- SNS制作
Laravelのおすすめポイント
Laravelのおすすめポイントは「どんな人でも使いやすい仕様になっている」ことです。
Laravelは、Web開発が初めての方向けにビデオチュートリアルやガイドがきちんと用意されています。シンプルなコードで記述できるため、使いやすさにも定評があります。
また経験豊富な上級者にとっても、豊富な機能が揃っており希望に応じてカスタマイズできるため、満足できるシステムとなっています。Web開発経験の有無にかかわらず使いやすいフレームワークを探しており、かつ今後機能の追加・拡張を検討している方におすすめです。
2.CakePHP
2005年にリリースされた「CakePHP」は、ケーキを焼くように簡単に開発できるというコンセプトのフレームワークです。定期的にアップデートを行っているため、時代のニーズに合った豊富な機能が揃っています。
CakePHPを使えば、おもに以下のようなWeb開発が可能です。
- ブログ:規模の大小を問わず簡単に作成できる
- ECサイトや集客サイト:Web上に動的な登録・購入・募集ページを構築できる
- 業務管理システム:従業員の情報共有・スケジュール管理・施設予約など
CakePHPのおすすめポイント
CakePHPのおすすめポイントは「シンプルな使いやすさ」です。ほかのフレームワークに比べ、コードの構文がシンプルで分かりやすく、Web開発が初めての方でも使いやすいのが特徴です。そのコンパクトな設計により、開発スピードが比較的速いのもメリットといえます。
3.Symfony
「Symfony」は2007年にリリースされたフレームワークです。プログラミング言語の一種であるRubyを用いたフレームワーク「Ruby on Rails」の仕組みを参考にしており、アプリケーション開発の効率化を実現しています。WebサイトやWebアプリケーション、APIやマイクロサービスなど、さまざまなシステム開発に用いられています。
Symfonyのおすすめポイント
Symfonyのおすすめポイントは「大規模開発に適した仕様であること」です。SymfonyではLaravelをはじめ多くのフレームワークで用いられる開発モデル「MVC」を採用。以下のように3つの作業工程に分けて役割分担を行い、エンジニアは各自アプリケーション開発を進めます。そのため、複数のエンジニアが関わるなど大規模なプロジェクトにおすすめのフレームワークです。
- Model:ビジネスロジックやデータベース処理
- View:ユーザーに表示する画面の処理
- Controller:呼び出すModelの処理、Viewの制御
またSymfonyは、開発したアプリケーションをパーツ化して再利用できるような仕様となっているので、効率を重視したい方にもおすすめです。ただし日本語によるガイドやサポートが少なく、習得までに時間がかかる可能性があります。
4.CodeIgniter
2006年にリリースされた「CodeIgniter」は、動的なWebサイト開発におすすめのフレームワークです。業務システムやWebアプリケーションの開発、Webサイトの保守など、さまざまな用途に活用できます。設定方法が簡単なので、初心者でも比較的扱いやすいでしょう。
CodeIgniterのおすすめポイント
CodeIgniterのおすすめポイントは「シンプルかつ軽量な仕様である」点です。CodeIgniterの機能はじつにシンプルで、初心者でも簡単かつ短期間でシステム開発ができます。またフレームワーク自体が軽量なので、比較的安価なサーバーでも高速で動作するのもメリットです。
5.Yii
2008年にリリースされた「Yii」は、シンプルな設計で機能も厳選されたソフトウェアです。そのため、以下のようなサーバーへの負荷が高いアプリケーション開発にも向いています。
- ポータルサイト:情報記事など膨大なデータにアクセスする入り口となるサイト
- フォーラム:大量のユーザーが書き込み・コミュニケーションできるオンラインコミュニティ
- コンテンツ管理システム(CMS):専門知識なくWebサイトを管理できるシステム
- ECサイト:インターネット上で決済・契約できるシステム
Yiiのおすすめポイント
Yiiを活用するメリットは「大規模かつ高品質なアプリケーションが作れること」です。Yiiは設計自体がシンプルなだけでなく、基本コードを自動生成できるコードジェネレータが搭載されているので、質・スピードともに満足できるでしょう。また既存機能を再利用し、組み合わせながら新しいアプリケーションを作れるので、カスタマイズ性が高いのもメリットです。
6.Laminas Project
「Laminas Project(通称:Laminas)」は、ZendFrameworkの後継フレームワークとして2019年にリリースされました。管理会社はLinux Foundationへと移行し、MVCモデルによるコード管理のしやすさ・拡張性の高さはそのままに、最新機能が増えて進化を遂げました。
おもに以下のような幅広い分野で活用されています。
- 電子商取引:ECサイトなど
- コンテンツ管理システム
- ヘルスケア:医療施設の予約システム、健康管理システムなど
- エンターテインメントプラットフォーム:さまざまな娯楽コンテンツの提供場所
- メッセージング:特定のアプリケーションでメッセージを送りあう
Laminas Projectのおすすめポイント
Laminasのおすすめポイントは「拡張性に優れている」点です。ZendFrameworkの頃と同じく、利用頻度の高い機能(コンポーネント)をいくつかにまとめて整理する「クラスライブラリ機能」を備えています。アプリケーション開発時に欲しい機能をすぐ呼び出せるので、拡張性が高くなっています。またMVCモデルを採用しているほか、設計パターンを自由に組めるという点から、大規模開発におすすめのフレームワークとなっています。
7.Phalcon
2012年にリリースされた「Phalcon」は、v2.0以降ウェブサーバーの拡張機能としてZephirを実装し、高速化を実現するPHPフレームワークです。MVCモデルを採用しており、数多くのWebアプリケーション開発に活用されています。
Phalconのおすすめポイント
Phalconのおすすめポイントは「高速かつ自由に開発できる」ことです。通常、フレームワークの拡張機能はPHPで行われ、高コストのファイル展開や読み込みに時間がかかります。またソースコードを機械に読み込ませるには、0と1で作られる機械語への翻訳が必要となるため、総じて処理速度が遅くなるというデメリットがあります。
しかしPhalconはZephirを実装しているため、作成したプログラムが自動的にC言語のコードに変換され、コンピュータ処理がスムーズに行われます。これにより高速な動作が可能となり、PHPの課題解決につながります。
またPhalconはエンジニアが自由に設計できるのもメリットです。ただし不具合が起きた際スムーズに対処できるよう、使用するコードは統一することを心がけましょう。
8.FuelPHP
2010年にリリースされた「FuelPHP」は、シンプルな設計なので初心者でも扱いやすいフレームワークとなっています。おもにWebサービスやアプリケーション開発に用いられます。
FuelPHPのおすすめポイント
FuelPHPのおすすめポイントは「開発の手軽さやスピード」です。FuelPHPは、1つのアプリケーション開発につき複数のMVCを保有できる「HMVCモデル」を採用しています。これによりアプリケーションの構造が整理され、チーム開発を効率よく進められます。なお各MVCはパーツとして管理できるので、コードの再利用性に優れているのもメリットです。
またFuelPHPの構造はシンプルで、かつ開発時は必要なプログラムだけを読み込みます。そのためメモリ消費が抑えられ、高速処理が可能です。ただし、機能拡張の際は自力でコーディングする必要があるため注意しましょう。
9.Flight
Flightは、PHPフレームワークのなかでもとくに軽量でシンプルな構造です。そのため初心者でも扱いやすく、スピーディな開発が可能です。
なおFlightは搭載機能の性質上、データ転送におけるシンプルな設計モデル「REST」に沿ったアプリケーション開発に適しています。
Flightのおすすめポイント
Flightのおすすめポイントは「シンプルさと自由さを両立させられること」です。Flightは直感的に操作できるよう、とにかくシンプルさにこだわっています。そのため複雑な工程が不要な、小規模のプロジェクトを進めたい場合におすすめのフレームワークです。
また拡張したい機能に応じてライブラリを追加することもできるので、カスタマイズしやすいのもメリットです。ただし、サポートやセキュリティ体制が物足りないと感じる可能性もあるほか、主要なフレームワークと比較すると案件が少ない点に注意しましょう。
PHPフレームワークを活用する際の注意点
PHPフレームワークは効率的なWeb開発に役立つソフトウェアですが、使用時の注意点もあります。具体的には以下2点が挙げられます。
- PHPフレームワーク独自の知識とスキルが必要
- カスタマイズ性が低くなる
PHPフレームワークの知識とスキルが必要
フレームワーク独自のメソッドやコードの書き方について、学ぶ時間が必要です。PHPを理解していなくても、PHPフレームワークを学習すればWeb開発ができる場合もありますが、PHP自体を理解していないと、トラブル発生時に原因が特定できず、適切な対処ができない可能性があります。そのため、フレームワークの知識と、PHPの基礎知識については必要です。
なお、よりカスタマイズされた機能を開発するには、フレームワークでは用意されていない機能もあるため、素のPHPで開発を進めることもあるでしょう。あくまでPHPフレームワークは「Web開発を効率よく行うための補助ツール」として用いることが大切です。
カスタマイズ性が低くなる
PHPフレームワークのほとんどは、ソースコードが公開されているオープンソースソフトウェアに分類されます。そのため、比較的自由なカスタマイズがしやすいと言われています。
しかし先述した通り、PHPフレームワークごとに備わっている機能が異なります。もし運用途中でフレームワークにない機能を取り入れようと思ったら、ゼロからコードを書いたり処理を実装したりする必要があります。その結果、かえって効率が悪くなってしまう可能性もあるのです。利用前には、欲しい機能が入っているのか・カスタマイズ性が高いのかもきちんと確認しましょう。
まとめ
今回は、Web開発に役立つおすすめのPHPフレームワークと、活用メリットについて解説しました。フレームワークを利用すれば開発工数や期間をグっと短くWeb開発ができます。フレームワークの仕組みだけではなく、PHP自体の知識も理解しておけば、フレームワークの有効的な使い方も理解できるでしょう。
今回は9つのphpフレームワークをご紹介しましたが、Web開発の目的や実装したい機能などを明確にしたうえで、自社に合った方法をぜひご検討ください。
バックエンドエンジニアが不足している?
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データベースサービスを基盤とするCRMであり、フロントエンドの知識があればカンタンに会員サイト(マイページ)、Webフォームを作成いただけます。