近年、多くの企業や自治体で申請管理システムの導入が進んでいます。
紙やExcelによる従来の申請管理には、承認漏れや属人化などの課題がありました。これらの課題を解決し、かつペーパーレス化やDXを進める施策として、申請管理システムが注目されています。
本記事では、申請管理システムの導入効果やユーザー側のメリットに加え、参考になる事例をご紹介します。
申請管理システムとは?
申請管理システムとは、さまざまな申請手続きをデジタル化・自動化するシステムです。イベントやセミナーの申込み、購入手続きなどのほか、経費精算や休暇取得といった社内申請にも活用されています。

当社のCRMプラットフォーム「クライゼル」での実装事例です。
2017年にはマイナポータルの運用開始に伴い、電子申請に対応した「ぴったりサービス」が登場しました。そのような背景もあり、各企業や自治体でも、さまざまな分野で申請管理のシステム化が進められています。
申請管理システムが注目される背景
近年では、多くの企業や自治体が申請管理のワークフローを見直しています。導入の手間やコストがかかるにも関わらず、なぜシステムの導入が進んでいるのでしょうか。
ここでは「業務効率化・DX化・ガバナンス」の観点から、申請管理システムが注目される理由を解説します。
紙やExcelによる管理の限界
紙やExcelを使った従来の申請管理には、業務効率化の面で限界があります。
たとえば、紙の申請書を複数の管理者に回すと、破れたり紛失したりするリスクが高まります。Excelで管理をする場合も、「最新版のファイルが分からない」「属人化していて入力項目を調整できない」などのトラブルが起こりがちです。
一方、申請管理システムではワークフロー全体をデジタル化できるため、次のような課題を解決できます。
- 選択式の項目を増やして、手入力(手書き)によるミスを減らす
- 自動承認フローや通知機能で承認漏れを防ぐ
- クラウド上に申請データを保存するため、いつでも最新版にアクセス可能
- ワークフローがどの段階にあるか、リアルタイムで確認できる
- 担当者が不在でも承認フローが滞らない(別のプロセスから進められる)
- 紙ベースの申請管理から脱却できるため、ペーパーレス化が進む
社外からアクセスできる申請管理システムを構築すれば、自宅や出張先からワークフローを進めることが可能です。
DXの推進
あらゆる業界で進むDX化も、申請管理システムの導入を後押ししています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術やデータの活用により、業務・組織・プロセス・企業文化などを変革すること。ビジネス環境の変化が激しい現代において、DX化は重要な戦略として位置づけられています。
参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて~」
申請管理システムは、ワークフローの自動化や効率化に加え、申請データも一元的に蓄積・管理できる仕組みです。デジタル技術とデータの両方を活用できるため、DX推進の基盤になります。
ガバナンス強化が求められる時代に
近年ではコンプライアンスや内部統制の観点から、企業ガバナンスの重要性がいっそう高まっています。株主(投資家)も企業の内部不正や情報漏えいを注視しており、「環境・社会・ガバナンス」を重視するESG投資と呼ばれる手法も広がりました。
企業が「健全な経営体制であること」をアピールするためには、トラブルの原因を追跡できる仕組みが必要です。その点、申請管理システムはすべての承認プロセスを記録に残せるため、ワークフローの可視化や監査対応をスムーズに行えます。
申請管理システムの導入効果(企業側)
申請管理システムを導入すると、企業にはさまざまなメリットが生じます。ここでは、特に押さえたい4つの導入効果について解説します。
1. 業務効率化やコスト削減
申請管理システムの導入は、さまざまな部署の業務効率化とコスト削減につながります。
たとえば、これまで申請内容を手入力でデータ化していた企業では、その作業自体が不要になります。システム上では入力内容がデータベースに自動で蓄積されるため、紙の申請書が必要ありません。結果としてペーパーレス化が進み、紙代や印刷代などのコストを削減できます。
以下では、申請管理システムで効率化できる業務と、削減できるコストをまとめました。
- 申請書の作成や回収(申請書自体が不要になる)
- 申請書の回覧(システム上で承認できるため、書類を回す必要がない)
- 手書きでの修正(システム上で修正可能)
- 進捗状況や承認段階の口頭チェック(リアルタイムで状況が分かる)
- 過去の申請状況の参照(データを検索できるため、大量の書類チェックが不要になる)
- 紙代、印刷代、郵送代
- 申請書の保管費用(倉庫代など)
- トラブル対応費や修正費用
- 人件費(事務処理時間の削減によるコスト削減)
最終的には人材の再配置も可能になるため、より戦略的な業務にリソースを集中させられます。
2. ミスや属人化を防げる
紙ベースの申請管理から脱却すると、書き写しや重複入力などが不要になるため、さまざまなヒューマンエラーを防げます。承認漏れや押印漏れなど、チェック段階での細かいミスも減らすことが可能です。
Excelでもペーパーレス化は進められますが、承認フローまで仕組み化しようとすると、「複雑なマクロになった」「内容を調整できない」といったトラブルが起こることも。その点、申請管理システムでは作業が標準化されるため、Excelでありがちな属人化も防ぎやすくなります。
3. 内部統制を強化できる
申請管理システムでは、「誰がどの申請を承認したか」「いつ承認されたか」がデータとして残ります。承認フローや業務プロセスが可視化されるため、内部統制を強化できるメリットもあります。
また、監査対応や情報開示が必要になった場合も、申請管理システムでは迅速なデータの参照が可能です。健全かつ透明性の高い体制を築けるため、顧客や投資家に向けても信頼感を示せるでしょう。
4.蓄積したデータを活用できる
申請管理システムでは、過去の申請内容や承認履歴などが自動で蓄積されます。これらのデータを分析すると、処理が滞っているボトルネックや申請件数の傾向を把握できるため、さらなる業務改善につなげることが可能です。
システム内で蓄積したデータには、次のような活用方法もあります。
- 月ごとの申請件数を可視化し、繁忙期に合わせて人材を配置する
- 承認までの時間を個人単位で比較し、遅延の原因を特定する
- 入力ミスや差し戻しが多い箇所を特定し、申請フォームを改善する
このほか、申請フォームにアンケートのような項目を追加して、顧客ニーズを調査する方法もあるでしょう。あらかじめデータの活用を意識することで、高度な経営分析のための基盤を構築できます。
申請管理システムのメリット(ユーザー側)
社外で運用する申請管理システムは、ユーザー側にも多くのメリットをもたらします。手軽に申し込めるようになれば、申請の手間や心理的なハードルを下げられるため、結果としてコンバージョン(申請数や資料請求など)の増加も期待できます。
ここからは、申請管理システムを利用する側のメリットを解説します。
1. 24時間どこからでも申請できる
紙の申請書とは違い、申請管理システムには郵送のプロセスがありません。自宅のパソコンやスマートフォンを使えば、24時間どこからでも申請が可能です。
窓口に出向く必要がないため、移動時間や待ち時間も発生しません。平日が忙しい人にとっては、夜間や休日に申請ができることも大きなメリットになります。
2. 申請状況をマイページで確認できる
各利用者のマイページが構築されるシステムでは、利用者は申請処理状況をリアルタイムで確認することが可能です。これは申請を受理する側としても電話やメールで問い合わせる機会が減るため、対応コストを抑えられます。
マイページにはさまざまな活用方法があり、以下のような機能を実装すると、ユーザーの利便性をさらに高められます。
- 申請が承認されたら通知が届く仕様にして、待ち時間のストレスを減らす
- 同じ内容で再申請するユーザーに向けて、過去の申請履歴を一覧化する
- サービスの利用状況や申請内容に合わせて、個別に電子クーポンを配布する
サービスによって仕様は異なるため、「マイページにどのような機能を持たせたいか?」を明確にしたうえで、導入するシステムを選ぶとよいでしょう。
3. システムによっては電子決済も可能
決済システムと連携した申請管理システムでは、クレジットカードや電子マネーなどの電子決済にも対応しています。電子決済が可能になれば、ユーザーは申請から支払いまでをワンストップで完結できるため、手続きをよりスムーズに進められます。
また、システム上には決済履歴が残るため、企業側も「通帳で入金確認をする」「入金記録をもとに領収書を発行する」といった手作業を減らすことが可能です。
申請管理システムの事例
申請管理システムにはさまざまな形があり、「どの業務を効率化したいか」「どのように改善するか」によって最適な仕様は異なります。ここでは5つのパターンに分けて、申請管理システムの参考になる事例をご紹介します。
事例1. 社内申請のデジタル化
ひとつ目は、経費精算や休暇取得、備品発注などの社内申請をデジタル化する事例です。オンライン上で承認フローを進められることに加え、申請履歴・承認状況がデータとして蓄積されるため、以下の導入効果が期待できます。
- 口頭やメールでの確認作業が不要になる
- 承認者が現場にいなくてもフローを進められる
- 「どこで承認フローが止まっているか」がすぐに分かる
- 過去の申請履歴を参考に承認の判断を下せる
- 監査対応を効率化できる
当社にご相談いただいた大手不動産会社様は、各種フォームを作成できる「クライゼル」を導入し、慶弔見舞金などの申請管理をデジタル化しました。承認された申請データを一覧化することで、会計担当者によるチェックや入金作業をスムーズにしています。

トライコーンが提供するクライゼルは、Webフォーム・メール配信・会員サイトを簡単に作成できるCRMプラットフォームです。24時間監視などの高いセキュリティ性や、webhookによる豊富な連携機能が特徴的で、多くの官公庁や大企業から選ばれています。
社内申請のデジタル化に興味がある企業様は、こちらのページからお気軽にお問い合わせください。
事例2. イベントやセミナーの申請フォーム作成
ウェブ上に申請フォームを作成し、イベントやセミナーの申込みをデジタル化する事例もよく見られます。
申請フォームの項目は簡単に編集できるため、一度システムを構築すればさまざまなイベントに対応可能です。また、アクセスデータや申請データを活用することで、以下のように多くの導入効果が期待できます。
- 入力漏れやメールの誤送信が減る
- 参加人数や属性データ(居住地や性別など)を自動集計できる
- 申請書の到着を待つ必要がないため、すぐ承認フローに移れる
- 参加者属性の分析により、マーケティング戦略を改善できる
- システムによっては、欠席やキャンセルの一元管理も可能
ウェビナーを運用していた当社のお客様は、クライゼルで管理工数やオペレーションミスの削減を実現しました。申請用のWebフォームを作成することで、メールによる受付から脱却し管理工数を削減しています。

クライゼルはセキュリティにも配慮しているため、情報管理の安全性も高められます。
上記のほか、条件分岐するフォームを作成した事例や、webhookで既存サーバーと連携した事例などもあります。顧客からの申込み対応を効率化したい企業様は、こちらのページをご参考ください。
事例3. 申請状況・履歴を確認できるマイページの構築
申請フォームと併せて、ユーザー用(社員や顧客)のマイページを構築する事例も増えています。
マイページ上では「承認・申請がどこまで進んでいるか」をリアルタイムで確認できるため、メールなどで申請状況を問い合わせる必要がありません。申請情報を蓄積するデータベースがあれば、過去の履歴を一覧表示することも可能です。
- ユーザー自身で申請状況を確認できるため、問い合わせの件数が減る
- セキュリティに配慮したマイページは、ユーザーの安心感にもつながる
- 同じ内容で再申請する場合に、過去の履歴をスムーズに確認できる
- ユーザーによる個人情報の変更手続きが容易
当社はクライゼルを使った事例として、賃貸物件の入居者用ページを公開しています。ログインをすると、ユーザーごとの契約状況や物件情報などが表示される仕組みです。

目的に合わせて、「施設予約」や「契約書ダウンロード」などのページも追加できます。
賃貸のように契約がある場合は、更新・解約手続き用のページを構築することも可能です。実際の操作感を確認したい企業様は、こちらのデモページにアクセスしてみてください。
事例4. 会社や工場の入構管理システム
申請管理システムを応用すると、車両や人の出入り(入構)を管理することも可能です。
入構管理をシステム化すれば、来場者や車のナンバーを紙で管理する必要がありません。また、遠隔地からでも承認ができるため、スムーズな入構を促せます。
- 渋滞が発生しづらくなる(待ち時間が減る)
- チェック漏れによる無断入構を減らせる
- 入構記録(誰がいつゲートを通ったか)が自動蓄積される
- 混雑状況に合わせて別のゲートを案内できる
当社のクライゼルでは、画像解析を活用した入構管理システムを構築できます。ゲートシステムとの連携により、フォームの申請内容と車両ナンバーなどを照合するようなシステムが構築可能です。

申請時に宛先部門を入力することで、事前承認できるシステムを構築しています。
入構管理システムにもさまざまな仕様があるため、まずはこちらのページからお気軽にご相談ください。
事例5. 申請から帳票出力までをデジタル化
サイボウズ社が提供するkintone(キントーン)も、申請管理に役立つサービスです。kintoneは業務改善に役立つアプリを作成できるサービスで、外部サービスとの連携により、さまざまなワークフローを構築できます。
当社の導入支援サービスを利用した人材系事業様は、2ヵ月の開発期間で申請~帳票出力のワークフローを構築しました。

各種フォームのデータをもとに、帳票出力するワークフローを構築しました。
サイボウズ社のオフィシャルパートナーである当社は、kintoneを利用した業務改善をサポートしております。システム設計はもちろん、伴走後のアフターフォローも行っておりますので、複雑なワークフローでもお気軽にご相談ください。
申請管理システムのよくある質問
申請管理システムには多くのサービスがあるため、「どこを比較すればいい?」「導入コストの相場は?」などの疑問が生じがちです。以下では申請管理システムのよくある質問と回答をまとめたので、計画を立てる際の参考にしてください。
- Q1システム導入の流れは?
- A
まずは関係者で、システム導入の目的を明確にすることが重要です。ある程度の方向性が固まったら、下記の手順で導入を進めましょう。
- 導入効果が出やすい手続きを特定する
- 全体のワークフローの中で初期の導入範囲を決める
- 自社課題を解決できるサービスを探す
- システムを構築して操作確認をする
- 効果検証をしてシステムを改善する
- システムの導入範囲を広げる
申請フローが変わると、社員や利用者が戸惑う可能性もあるため、チュートリアルを作成するなどのユーザフォローも必要です。
- Q2申請管理システムの選び方は?
- A
導入するシステムは、機能と費用対効果の両面で比較することが重要です。以下のポイントを意識しながら、自社に合ったサービスを探しましょう。
- 必要な機能が備わっているか(業務要件を満たせるか)
- 導入コストが予算内に収まるか
- 長期的な運用コストを抑えられるか
- 既存システムとの連携が可能か
- 運用面も含めて、強固なセキュリティ体制を築けるか
比較が難しい場合は、無料のトライアル期間を活用する方法があります。当社のクライゼルも、14日間の無料体験をご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
- Q3システムの導入コストはどれくらい?
- A
申請管理システムの導入コストは、利用できる機能や導入範囲、契約ユーザー数などで変わります。承認フローの細かい違いでも仕様が変わるため、一概に導入コストをまとめることはできません。
コスト面に不安を感じる場合は、スモールスタートで始められるシステムがおすすめです。当社のクライゼルでは、月額1万円から利用できる料金プランをご用意しております。
プランの詳細を知りたい方は、こちらのページをご参考ください。
- Q4セキュリティ面に問題はない?
- A
多くの申請管理システムは、不正ログインや情報漏えいのリスクに対処しています。参考として、以下では主なセキュリティ機能をまとめました。
- 暗号化通信
- 専門スタッフによる24時間監視
- IDSなどの侵入検知システム
- ウイルススキャンなどのマルウェア対策
- 定期的な脆弱性チェックやアップデート
クライゼルを提供するトライコーンは、ISO/IEC 27001やISO/IEC 27017、プライバシーマークの取得企業です。サービスやサーバーのセキュリティ面にも配慮しているため、どのような企業様でも安心してご利用いただけます。クライゼルのセキュリティに関してはこちらを参照ください。
- Q5どのようなシステムと連携できる?
- A
申請管理システムの拡張性は、利用するサービスによって異なります。導入範囲の拡大を予定している場合は、「どのシステムと連携できるか」「外部連携でフローがどうなるのか」を事前にイメージしておきましょう。
たとえば、当社のクライゼルはwebhookやAPIにより、チャットツール・SFA・SMSなどとの連携が可能です。基幹システムとの連携も可能です。多様なシステムと連携できますので、お気軽にご相談ください。
申請管理システムで社内外のワークフローを改善しよう
申請管理システムは、社内外のさまざまなワークフローに導入できます。解決したい課題を明確にし、目的に合ったサービスを選ぶことができれば、企業側・ユーザー側の双方にメリットが生じます。
ただし、長期にわたって効果を高めるには、将来も見据えたシステム設計が必要です。サービス選びや設計に悩んでいる企業様は、CRMプラットフォーム「クライゼル」とkintone開発サービスを提供するトライコーンにぜひご相談ください。


