【専門家インタビュー】CRMとは?なぜCRMは重要なのか?導入成功の秘訣とは?

専門家インタビューCRMとは?導入成功の秘訣
CRM

「CRMとは何か?」このキーワードで検索するあなたは、顧客とのより良い関係構築、そしてビジネスの成長に関心があるのではないでしょうか。

今回は、トライコーン株式会社でマーケティングの責任者を務める専門家、服部誠さんに「CRM(顧客関係管理)」について、初心者にも分かりやすく解説していただきました。服部さん自身の経験や、身近なレストランの事例を交えながら、CRMの本質から導入のステップ、成功の秘訣までを紐解きます。

顧客との「良い関係性」がビジネスを加速する

坂頭
坂頭

本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、今回のテーマである「CRM(顧客関係管理)」とは、一体どのようなものなのでしょうか?

服部
服部

よろしくお願いします。CRMは横文字で分かりにくいですよね。顧客関係管理という日本語も、少し硬い印象を受けるかもしれません。私なりに分かりやすく言うと、「お客様のことを深く理解し、その理解に基づいてお客様に行うあらゆる働きかけ」のことだと考えています。

坂頭
坂頭

お客様への働きかけ、ですか。具体的に教えていただけますか?

服部
服部

はい、では馴染みのレストランを例にご説明します。

私の場合、月1回夫婦で訪れる近所のレストランがあります。そこのオーナーさんとはインスタでも繋がっていて、オーナーさんはお店の情報をインスタで発信したり、私たちがそれに反応したりといったコミュニケーションがあります。

オーナーさんは、私が新鮮な野菜を使ったサラダが大好きで、いつも大盛りで注文することを覚えてくれています。私がしばらくお店に行けていないと、「〇〇という美味しい魚が入ったんですよ。サラダと一緒にいかがですか?」といったLINEメッセージをいただきます。

このようなメッセージをきっかけに食事の予約をし、帰りにはお土産に野菜をいただいたりすることもあります。これはまさにCRMそのものだと感じています。

オーナーさんは、私が前回いつ来て、何が好きで、どれくらいの金額を使うのかといった情報を把握しています。そして、インスタでの情報提供や、しばらく来店がない際のLINEメッセージといった「働きかけ」を通じて、私たちとの関係を良好に保ってくれています。

もし、このオーナーさんが私たちをただの一見さんとして扱っていたら、おそらく私たちはそのレストランのことを忘れてしまっていたでしょう。CRMとは、お客様の情報を管理し、お客様に働きかけ、良好な関係を維持する活動のことなのです。

こうしたレストランだけでなく、どのような業種でもお客様の好みや行動履歴を理解し、適切な対応を取ることで、より良い顧客関係を築くことが可能です。

坂頭
坂頭

確かに、行きつけのレストランのオーナーが、名前や好みを覚えていてくれるのは嬉しいし、通いたくなります。

このような、顧客理解に基づいた継続的な関係構築が重要なんですね。

では実際に、企業がCRMに取り組む場合、具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか?

CRM導入の前に考えるべき「自社の課題」と「顧客体験」

服部
服部

CRMを企業で実践していくための概念図がありますので、ご紹介しましょう。

CRM概念図

この図は、3つの階層、お客様の購買プロセス、それに対する企業のビジネス目的、そしてそれらを支えるシステムで構成されています。

お客様は、認知から始まり、情報収集、比較検討、購入、そして購入後の体験共有やサポートへと進みます。これに対し、企業はマーケティング、営業、サポートといった各部門が連携しながら、お客様に対応していく必要があります。

そして、この一連の活動を支えるのが「広義な意味でのCRMシステム」です。ただし、CRMシステムを導入するというのは、あくまで手段です。

「CRMをやりたいけれど、どうすればいいですか?」という質問に対して、私がまずお伝えしたいのは、「システム導入を急ぐのではなく、自社の課題を明確にすること」です。

リード獲得や育成に課題があるのか?営業の生産性が低いのか?サポートに問題があるのか?部門間でのデータ連携に問題があるのか?まずは、自社が最も解決すべき課題を特定し、優先順位をつけることが重要です。

その上で、例えばマーケティングに課題があるのであれば、その課題を解決するためにどのように業務改善をすべきかを検討します。そして、それを実現するためのマーケティング支援ツールといったシステムの導入を検討するという流れが理想的です。

ここで重要なのは、部門ごとにツールを導入するだけでなく、将来的に顧客に関する情報を連携することを見据えてシステムを選ぶということです。

お客様から見れば、問い合わせ窓口が複数あったとしても、全て同じ会社です。マーケティング部門が把握している情報が営業部門に伝わっていなかったり、その逆も然りといった状況は、顧客体験を大きく損ないます。

「まず自社の課題を明確にし、その課題を解決するためにツールを導入し、そして顧客データを統合していく視点を持つこと。」これが、企業がCRMを成功させるための重要な考え方だと思っています。

坂頭
坂頭

ありがとうございます。それでは、CRMが企業にとってなぜ重要なのか、そして導入を成功させるための秘訣について、さらに深く掘り下げていきます。

CRMが企業にとってなぜ重要なのか、その理由についてお聞かせください。

服部
服部

最も重要な理由は、顧客体験の向上に繋がるからです。顧客体験とは、顧客が商品やサービスと接する際に、企業の様々な部署との接点を通して得られる全ての経験を指します。

顧客が商品やサービスに興味を持ち、利用し、アフターサービスに至るまでの一連のプロセスで感じるあらゆる印象や価値、それが顧客体験です。CRMは、この顧客体験の向上に直接的に貢献するため、企業にとって非常に重要なのです。

これはBtoB、BtoC問わず共通して言えることです。情報化が進んだ現代において、顧客は商品やサービスに関する多くの情報を持っています。AIを使えば、瞬時に競合製品との比較も可能です。つまり、お金も情報も、以前にも増して顧客側が持っている状況と言えます。

このような状況下で、顧客の興味関心事を把握せずに営業したり、顧客先で起きているトラブルを認識せずに対応したりすることは、良い顧客体験を提供しているとは言えません。良い顧客体験を提供するためにCRMが必要であり、そしてこの良い顧客体験は、最終的に売上拡大に繋がるのです。

 

坂頭
坂頭

顧客体験の向上は本当に重要なポイントですよね。それを実現するためには、顧客情報の統合が不可欠だと思いますが、これはなかなか難しいのではないでしょうか?

顧客情報の一元化:スモールスタートと部門連携が鍵

服部
服部

おっしゃる通りです。社内にある顧客データを一度に全て一元化するには、費用も時間もかかります。そのため、まずは部門内で顧客データを統合することから始めるのが良いでしょう。

意外かもしれませんが、部門内でも顧客データが分散しているケースは少なくありません。例えば、東京支店と大阪支店でデータが分かれていたり、同じ営業部の中でも別の課ではデータが整理されていなかったりといった状況です。

まずは部門内で分散している情報をしっかりと集約することが重要です。その上で、部門間、例えば営業とマーケティング、営業とカスタマーサポートといった間でデータ連携を進めていくのが、顧客情報の一元化に向けた現実的な進め方だと思います。

 

坂頭
坂頭

なるほど。小さなところから大きなところに広げていくイメージですね。

服部
服部

はい、そうです。まずは最初に部門内での集約化しないと、業務が属人化し、担当者が異動や退職した場合に顧客対応の質が低下してしまう可能性があります。誰が見ても顧客の状況が分かるように、まずは部門内で顧客情報を一元化することから始めましょう。

坂頭
坂頭

そうなると、同じ会社の中で部署が異なっても同じCRMを使うことは非常に重要になってくるように思いますが、いかがですか?

服部
服部

 そうですね。同じCRMシステムであれば、データ連携は容易になります。しかし、データ連携がしっかりとできるのであれば、マーケティング、営業、カスタマーサポートが別々のシステムを使っていたとしても、対応は可能です。

なお、システム的なデータの連携以上に定期的な情報共有ミーティングを実施して双方が必要とする情報を確認しあいながら、データの質を継続的に改善していくことが最も大事だとおもいます。

CRMシステム選定のポイント:目的、現場、セキュリティ、コスト

坂頭
坂頭

それでは、CRMを実施するためにシステムを導入しようとする場合、様々なシステムがありますが、どのような観点で選ぶと良いでしょうか?

服部
服部

これはCRMシステム選定の話になりますね。本当に多くのシステムが存在するため、何を選べば良いか迷うのは当然だと思います。

ここで最も重要なのは、冒頭にもお話しましたが、システム導入が目的にならないようにすることです。自社において最も改善したいことは何かを明確にすることが、システム選定の第一歩です。

例えば、BtoBのSaaS企業であれば、「営業引き合いを月50件から月200件にしたい」という目標を明確にする。BtoCの通販企業であれば、「顧客の2回目の購入率を現状の20%から40%にしたい」といった具体的な課題を設定します。

課題が明確になれば、それを達成するためのステップもほぼ明確になります。もし課題が不明確な場合は、生成AIなどと壁打ちして自社の課題を深掘りしてみるのも有効でしょう。

課題が明確になると、それを解決するために必要な業務が具体的にリストアップされます。先ほどのBtoB企業の例であれば、検索キーワードに応じたWebコンテンツの充実、問い合わせフォームの設置、顧客データに基づいたメールマーケティングなどが考えられます。BtoC企業の例であれば、初回購入後の顧客に対して、2回目の購入を促す最適なタイミングの把握とメッセージ(LINEやメールなど)の作成・配信などが考えられます。

これらの業務上の課題や必要なことが分かれば、それらに優先順位をつけて、それを実現できるシステムを候補として選択します。場合によっては、複数のシステムを組み合わせることも視野に入れると良いでしょう。

 

坂頭
坂頭

導入しても利用されないシステムとなってしまったら、企業にとって無駄なコストが発生するだけになってしまいますね。導入目的を明確にすることが、企業に利益をもたらすシステム選定の重要な第一歩なのですね。

服部
服部

はい、そうです。

その上で、次に重要なのが現場がシステムを使えるかどうかです。高機能なシステムを導入しても、現場の担当者が使いこなせなければ意味がありません。マーケティング担当者が使いにくいマーケティングシステム、営業担当者が使えないSFAは宝の持ち腐れです。現場の担当者のITリテラシーや業務フローに合った、使いやすいシステムを選ぶことが重要です。

また、セキュリティも非常に重要な要素です。CRMには多くのお客様情報が蓄積されるため、データの安全性が不可欠です。システム的なセキュリティ(アクセス権限設定、不正アクセス防止、監査ログ、IPアドレス制限、データ暗号化など)に加えて、ISO 27001やISO 27017、JIS Q 15001(プライバシーマーク)といった第三者認証を取得しているなど、組織的なセキュリティ体制が整っているかどうかも確認すべきです。

そして、ROI(投資対効果)を考慮する必要があります。システム導入コストには、システムのライセンス費用、導入コンサルティング費用、トレーニング費用、マーケティングやサポートのコンテンツ制作費用などが含まれます。これらを総合的に判断し、長期的視点でROIを見極めることが重要です。

坂頭
坂頭
 

システムのランニング費用だけでなく、コンテンツ制作費用なども含めたトータルコストでROIを計算する必要があるのですね。

服部
服部

 その通りです。システムライセンス費用や導入コンサルティング費用だけに目を向けがちですが、実際にシステムを運用していくためには、様々なコストが発生します。これらのコストを明確にした上で、費用対効果を検討することが重要です。

坂頭
坂頭

ここまでの話をまとめると、CRMシステム導入の際は、自社がやりたい業務ができるか、現場が使いこなせるか、セキュリティは高いか、そして全体の導入コストが見合っているかという観点で選択すれば良いということですね。

服部
服部

その通りです。

CRM導入を成功させる秘訣:リーダーシップ、データ品質、PDCA

坂頭
坂頭

ありがとうございます。最適なCRMシステムを選んだ上で、導入を成功させるためにユーザー企業は何をすべきでしょうか?

服部
服部

自社にとって最適なCRMシステムを選ぶことは重要ですが、それを実際に運用に乗せることは全く別の次元の話です。私が特に重要だと考えるのは、以下の3点です。

導入部門のリーダーシップ

服部
服部

マーケティング支援システムであればマーケティング部長、SFAであれば営業部長、サポート支援システムであればサポート部長が、それぞれの部門内で導入を主導し、コミットすることが不可欠です。担当者任せにするのではなく、責任者が率先して推進することで、導入は成功に近づきます。さらに、システム連携の観点では、部門長だけでなく、その上の役員レベルのリーダーシップも重要になります。

データの入力徹底と品質担保

服部
服部

どれほど優れたシステムを導入しても、データ入力が不十分だったり、誤ったデータが入力されていたりすると、システムは有効に機能しません。システム利用に関する教育を徹底し、正確なデータ入力とデータの品質維持を日々行うことが重要です。質の低いデータ(Garbage)を入れても、質の高いアウトプットは得られません。品質の悪いデータ出し入れをしてしまう現象を、システムやデータ分析の世界でGarbage in、Garbage out(訳:ゴミを入れればゴミしか出てこない)と言います。

効果測定とPDCA

服部
服部

CRMの導入はゴールではなく、スタートです。最初に設定した業務課題の解決に向けて、導入効果をしっかりと測定し、定期的に関係者がミーティングを行い、運用ルールの見直し、システムの使いやすさの改善、活用状況の確認などを行いながら、PDCAサイクルを回していくことが重要です。

坂頭
坂頭

 システム導入だけでなく、運用面でも様々な検討が必要なのですね。CRMシステム導入を成功させる秘訣、大変よく分かりました。最後にお話しいただいた3つの点は本当に重要ですね。本日は貴重なお話、誠にありがとうございました。

服部
服部

こちらこそ、ありがとうございました。

今回のインタビューでは、CRMが企業にとってなぜ重要なのか、そしてその導入を成功させるための具体的なステップと重要なポイントについて、トライコーン株式会社の服部 誠氏に詳しく解説していただきました。顧客体験の向上、顧客情報の一元化、適切なシステム選定、そして導入後の運用におけるリーダーシップ、データ品質の維持、PDCAサイクルの実践。これらの要素をしっかりと押さえることが、CRM導入を成功させ、ビジネス成長に繋げるための鍵となるでしょう。

弊社の多彩な業務で使える高セキュリティなCRMプラットフォーム「クライゼル」のカタログは下記からダウンロードいただけます。機能・料金表の記載もありますので、ぜひご覧ください。
クライゼルカタログ資料ダウンロードリンク
服部誠

トライコーン(株)
 Senior Vice President of Marketing。
 同社 元取締役COO
Web広告、CRM、CDP、データ可視化などお客様のWebマーケティングの課題解決に長年従事。
Salesforce Marketing cloud メールスペシャリスト / アドミニストレータ / コンサルタントおよび、Salesforce アドミニストレータの各認定資格を保持。
Markezine Dayでの登壇や、自社ウェビナー、共催セミナーでの登壇実績多数。

服部誠をフォローする
タイトルとURLをコピーしました