「kintoneを導入したものの、自社の業務に合わず、結局Excel管理に戻ってしまった…」
「外部の会社に開発を頼もうとしたが、見積もりが高額で、そもそも要件を正確に伝える自信がない…」
中小企業のDX推進を担当する中で、このような悩みを抱えている方は少なくありません。kintoneは非常に柔軟で強力なツールですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、自社の業務内容を深く理解したアプリを構築することが不可欠です。
その解決策として、今注目されているのが「kintone対面開発」です。
この記事では、kintoneの専門家が、対面開発とは何かという基本から、メリット・デメリット、費用相場、そして最も重要な「失敗しない開発パートナーの選び方」まで、あなたの疑問や不安を解消するために徹底的に解説します。
この記事を読めば、対面開発の全体像を完璧に理解し、自信を持って自社に最適な開発パートナーを見つけ、「使えるkintone」への第一歩を踏み出せるようになります。
kintone対面開発とは?従来の開発との違いを徹底比較
「対面開発」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。まずは、この開発手法がどのようなもので、従来の方法と何が違うのかを明確に理解しましょう。
そもそもkintone対面開発とは?
kintone対面開発とは、その名の通り、kintoneの専門家と依頼者が対面し、会話をしながらリアルタイムで一緒にアプリを構築していく開発手法です。専門家があなたの隣で、業務内容や課題をヒアリングしながら、その場でどんどんアプリの形を作っていきます。
従来のように分厚い要件定義書を作成したり、開発会社にすべてを「丸投げ」したりするのとは全く異なります。「この項目を追加してほしい」「このプロセスはもっとシンプルにできないか」といった要望をその場で伝え、即座にアプリに反映させていく、ライブ感のある共同作業とイメージしてください。これは「伴走開発」や「目の前で開発」とも呼ばれる、非常に実践的なアプローチです。
従来型開発との決定的な違い
では、具体的に従来型の開発手法(ウォーターフォール開発など)と対面開発では何が違うのでしょうか。両者の特徴を比較してみましょう。
比較項目 | kintone対面開発 | 従来型の開発(ウォーターフォール開発など) |
---|---|---|
開発プロセス | 会話しながらリアルタイムで構築・修正 | 要件定義→設計→開発→テストの順で進行 |
スピード感 | 非常に速い(数時間~数日でプロトタイプ完成) | 遅い(数週間~数ヶ月単位) |
柔軟性 | 非常に高い(仕様変更に即時対応可能) | 低い(手戻りが困難で追加費用が発生しやすい) |
認識のズレ | ほぼ発生しない | 発生しやすい(完成後に「こんなはずでは」となりがち) |
発注者の関与 | 深く関与(一緒に作り上げる) | 限定的(主に要件定義とテストのフェーズ) |
完成物の精度 | 業務に100%フィットしやすい | 要件定義の精度に依存する |
このように、対面開発はスピード・柔軟性・正確性の面で従来型開発を大きく凌駕します。過去に外注で「要件を伝えるだけで一苦労だった」「完成したものがイメージと違った」という苦い経験を持つ方にこそ、最適な手法と言えるでしょう。
kintone対面開発のメリット・デメリット【自社に合うか見極めよう】
対面開発は多くのメリットを持つ一方で、注意すべき点も存在します。メリットとデメリットの両方を正しく理解し、自社の状況に合っているかを見極めることが重要です。
メリット1:認識のズレが生まれない「超高速」開発
対面開発最大のメリットは、開発者と依頼者の認識のズレが限りなくゼロになることです。目の前でアプリが形になっていくため、「伝えたかったのはこういうことじゃない」といった齟齬が起こりません。
従来の開発では、要件定義書という「書類」を介してコミュニケーションを取るため、細かなニュアンスが伝わらず、完成後に大きな手戻りが発生することが多々ありました。しかし対面開発では、その場で見て、触って、確認できるため、修正も即座に行えます。これにより、無駄なやり取りや手戻りがなくなり、驚くほどのスピードで開発が進むのです。簡単なアプリであれば、わずか数時間で実用的なプロトタイプが完成することも珍しくありません。
メリット2:業務に100%フィットするアプリが完成する
あなたの会社の業務には、文章化しにくい独自のルールや長年の勘どころが存在しませんか?対面開発では、そうした現場の「生きた知識」を直接アプリに反映させることができます。
専門家は、単に言われた通りの機能を作るだけでなく、「なぜこの作業が必要なのか」「本来の目的は何か」といった本質的な部分まで対話を通じて深掘りします。これにより、依頼者自身も気づいていなかった潜在的な課題や改善点が見つかることもあります。結果として、教科書通りのシステムではなく、本当に現場で使われ、業務改善に直結する「100%オーダーメイド」のアプリが完成するのです。
メリット3:開発プロセスを学ぶことで「内製化」への道が開ける
対面開発は、単にアプリを作ってもらうだけの場ではありません。専門家がどのような思考でアプリを設計し、設定していくのかを間近で見ることができるため、kintone活用のノウハウが自然と自社に蓄積されます。これは、将来的な「内製化」への大きな一歩となります。
優れたパートナーは、ハンズオン形式で操作方法を教えながら開発を進めてくれます。開発プロセスに関わることで、「この程度の修正なら自分たちでできるな」という感覚が養われます。最初は専門家と二人三脚で、いずれは自社の力で業務改善を回していく。対面開発は、アプリという「モノ」だけでなく、業務改善スキルという「コト」を得られる、最強の伴走型トレーニングなのです。
デメリットと注意点:対面開発が不向きなケース
多くのメリットがある対面開発ですが、万能ではありません。以下のようなケースでは、不向きな場合があるため注意が必要です。
- 大規模・複雑なシステム開発: 基幹システムとの連携や、極めて複雑なロジックを要する大規模開発には、綿密な設計を伴う従来型開発の方が適している場合があります。
- 依頼者側が全く時間を割けない: 対面開発は依頼者の積極的な参加が前提です。担当者が多忙で、開発セッションの時間を確保できない場合は、プロジェクトを進めることが困難になります。
- 改善したい業務が全く定まっていない: 「何が課題かもわからない」という状態では、対話のスタートラインに立つことができません。ある程度、対象業務や課題感を明確にしておく必要があります。
kintone対面開発の費用相場と料金体系
対面開発を検討する上で、最も気になるのが費用でしょう。ここでは、一般的な料金体系と費用相場について解説します。
主な料金体系は「時間単価制」
kintone対面開発の料金体系は、専門家が稼働した時間に基づいて費用が発生する「時間単価制(タイムチャージ)」が主流です。これは、一緒に作業した分だけ支払う、非常に透明性の高いモデルです。
料金体系 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
時間単価制 | 開発者の作業時間(1時間あたり〇円)で計算 | ・費用が明確で透明性が高い ・小さな修正から柔軟に依頼できる | ・開発が長引くと費用が増加する ・事前に総額を確定しにくい |
パッケージ制 | 「〇時間の開発で〇円」といったパック料金 | ・予算の上限が明確で安心 ・時間単価より割安な場合がある | ・時間を超えると追加料金が発生する ・柔軟性に欠ける場合がある |
パートナーによっては、初回相談は無料であったり、複数回分をまとめて契約するお得なパッケージプランを用意していたりします。自社の予算や依頼したい内容に合わせて、最適な料金プランを選ぶことが大切です。
費用相場の目安
時間単価の相場は、開発会社のスキルや実績によって異なりますが、1時間あたり15,000円~30,000円程度が一般的です。
これを基に、開発するアプリの規模に応じた費用目安を考えてみましょう。
- 簡単なアプリ(例:日報、備品管理): 3~5時間程度(約5万円~15万円)
- 中規模のアプリ(例:案件管理、顧客管理): 10~20時間程度(約15万円~60万円)
- やや複雑なアプリ(複数のアプリ連携など): 30時間以上(約45万円~)
これはあくまで目安です。費用を抑える最大のポイントは、依頼者側でしっかりと準備をしておくことです。準備が万全であればあるほど、開発セッションの時間が短縮され、結果的にコストを抑えることができます。
【失敗しない】kintone対面開発パートナーの選び方|20のチェックリスト
対面開発の成否は、どのパートナーと組むかで9割が決まると言っても過言ではありません。ここでは、最高のパートナーを見つけるための具体的なチェックリストをご紹介します。
パートナー選びが成功の9割を占める理由
対面開発は、単なる技術力だけでは成功しません。あなたの会社の業務を深く理解しようと努め、専門用語を使わずに分かりやすく説明し、共にゴールを目指してくれる「コミュニケーション能力」と「伴走力」が不可欠です。
実績や価格だけで安易に選んでしまうと、「専門用語ばかりで話についていけない」「こちらの意図を汲み取ってくれない」といった事態に陥りかねません。これから紹介するチェックリストを活用し、多角的な視点で慎重にパートナーを選定しましょう。
【超重要】kintone対面開発パートナー選定20のチェックリスト
初回相談や問い合わせの際に、ぜひこのリストを片手に確認してみてください。
分類 | No. | チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|---|---|
信頼性・実績 | 1 | サイボウズオフィシャルパートナーか? | 公式に認められた信頼性の証です。 |
2 | kintoneの開発実績は豊富か? | 具体的な事例(特に自社と近い業種)を提示してもらいましょう。 | |
3 | 自社の業界・業務への理解があるか? | 業界特有の課題や商習慣を理解していると話がスムーズです。 | |
4 | 担当者の顔やプロフィールが見えるか? | 誰が担当するのかが明確だと安心できます。 | |
スキル・ 提案力 |
5 | 業務課題のヒアリングを重視しているか? | すぐに機能の話をするのではなく、ビジネスの課題から聞いてくれるか。 |
6 | プロトタイプを迅速に作成してくれるか? | 口頭だけでなく、実際の画面を見せて具体的なイメージを共有する姿勢があるか。 | |
7 | kintoneの標準機能で解決しようとするか? | 安易にカスタマイズ(追加費用)を勧めるのではなく、標準機能の活用を第一に考えてくれるか。 | |
8 | 複数の解決策を提示してくれるか? | 一つの方法を押し付けるのではなく、メリット・デメリットを含めて選択肢を示してくれるか。 | |
9 | できないことは「できない」と正直に言うか? | 誠実さの表れです。期待値を適切にコントロールしてくれます。 | |
コミュニケーション | 10 | 専門用語を多用せず、平易な言葉で説明してくれるか? | ITに詳しくない担当者でも理解できるよう配慮があるか。 |
11 | レスポンスは迅速かつ丁寧か? | 問い合わせへの対応スピードは、プロジェクト開始後の姿勢を反映します。 | |
12 | 「先生と生徒」でなく対等なパートナーとして接してくれるか? | 共にゴールを目指す「伴走者」としての姿勢があるか。 | |
13 | こちらの意見やアイデアを尊重し、引き出してくれるか? | あなたの会社の知見を最大限に活かそうとしてくれるか。 | |
内製化支援 | 14 | 開発プロセスをオープンにしてくれるか? | 「なぜこう作るのか」を説明し、ノウハウを共有してくれるか。 |
15 | 内製化支援のメニューや実績があるか? | 最終的に自走することを見据えたサポート体制があるか。 | |
16 | 開発後のトレーニングを提供しているか? | 作って終わりではなく、社内への定着まで支援してくれるか。 | |
費用・契約 | 17 | 料金体系は明確でわかりやすいか? | 見積もりの内訳が明瞭か。何にいくらかかるのかが明確か。 |
18 | サポートの範囲はどこまでか? | 契約時間外の簡単な質問への対応など、サポート範囲を確認しましょう。 | |
19 | 契約前に無料相談の機会があるか? | まずは相性を確かめる場があるか。 | |
20 | 無理な契約を迫らないか? | じっくり検討する時間を与えてくれるか。 |
【悲報】こんな会社は危険!失敗するパートナーの特徴
一方で、以下のような特徴を持つパートナーは避けるべきです。
- すぐにJavaScriptでのカスタマイズを勧めてくる: 標準機能でできることを知らない、あるいは工数を増やして高額な見積もりを出そうとしている可能性があります。
- こちらの話を遮って持論を展開する: 業務理解よりも、自社のやり方を押し付けようとする傾向があります。
- 実績が不明瞭、または誇張されている: 具体的な事例を尋ねても、曖昧な回答しか返ってこない場合は要注意です。
【これで万全】kintone対面開発を依頼する前に準備すべきこと
最高のパートナーを見つけたら、次は依頼者側の準備です。事前の準備がしっかりしているほど、開発セッションはスムーズに進み、時間とコストの節約に直結します。
なぜ準備が重要なのか?
対面開発は時間単位で費用が発生することが多いため、開発セッションの時間は非常に貴重です。「何から話そうか…」「あの資料はどこだっけ…」と悩んでいる時間もコストに含まれてしまいます。事前に論点を整理し、必要な情報をまとめておくことで、密度の濃い、生産的な時間にすることができるのです。
準備リスト1:現状業務の棚卸しと課題の明確化
まずは、今回kintoneで改善したい業務について、現状を整理しましょう。以下の点を書き出してみるのがおすすめです。
- 誰が: その業務の担当者は誰か?
- いつ: どのタイミングでその業務が発生するのか?
- 何を: どんな情報(データ)を扱っているのか?
- どのように: どんなツール(Excel, 紙, メール等)を使い、どんな手順で処理しているのか?
- 課題: その業務のどこに問題を感じているか?(時間がかかる、ミスが多い、情報共有されないなど)
手書きのフロー図や、現在使っているExcelファイルなどがあれば、それも準備しておくと非常にスムーズです。
準備リスト2:「理想の姿」と優先順位の決定
現状の課題を踏まえ、kintoneを導入することで「どうなりたいのか」という理想の姿をイメージします。そして、実現したいことに優先順位をつけましょう。
例えば、「案件管理」を改善したい場合、
- 【優先度:高】営業担当者別の進捗状況をリアルタイムで見える化したい
- 【優先度:中】見積書をkintoneから直接出力できるようにしたい
- 【優先度:低】過去の類似案件を簡単に検索できるようにしたい
のように優先順位を決めておくことで、限られた時間の中で最も価値の高い機能から実装していくことができます。
kintone対面開発の進め方
ここでは、実際の対面開発がどのような流れで進むのかをご紹介します。
対面開発の基本的な流れ
一般的な対面開発は、以下のステップで進行します。オンラインでの実施も可能です。
- 初回相談(無料): まずは現状の課題やkintoneで実現したいことを相談します。ここでパートナーとの相性を確認しましょう。
- 対面開発セッション: 事前に準備した資料をもとに、専門家と対話しながら目の前でアプリを構築してもらいます。実際に操作しながら「もっとこうしたい」という要望を伝えます。
- プロトタイプの完成と試用: セッションで作成したアプリ(プロトタイプ)を、実際の業務担当者に数日間試してもらいます。
- 追加開発・修正: 試用して出てきた改善点や追加要望を、次のセッションで反映させます。このサイクルを繰り返すことで、アプリの完成度を高めていきます。
- 納品・操作レクチャー: 完成したアプリを納品し、関係者向けに操作説明会などを実施します。
よくある質問(Q&A)
最後に、kintone対面開発を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。
Q1. ITやkintoneに詳しくなくても本当に大丈夫ですか?
A1. はい、全く問題ありません。むしろ、ITに詳しくない方にこそ対面開発はおすすめです。優れたパートナーは、専門用語を使わずにあなたの業務内容を丁寧にヒアリングし、理解しようと努めます。あなたは普段の業務のことを話すだけで大丈夫です。専門的な知識は一切不要なので、安心してください。
Q2. どのくらいの期間でアプリは完成しますか?
A2. アプリの複雑さによりますが、非常にスピーディです。簡単なものであれば、1回のセッション(2~3時間)で実用レベルのものが完成します。案件管理のような中規模のアプリでも、数回のセッション(合計10~20時間程度)で本格的な運用を開始できるケースが多いです。これは、要件定義から納品まで数ヶ月かかる従来型開発とは比べ物にならない速さです。
Q3. 地方の企業でも対面開発は可能ですか?
A3. はい、可能です。多くの開発会社が、ZoomやGoogle MeetといったWeb会議ツールを利用した「オンライン対面開発」に対応しています。画面を共有しながら、対面とほとんど変わらないクオリティで開発を進めることができます。場所を問わずに、全国の優れたパートナーに依頼できるのも大きなメリットです。
まとめ:kintone対面開発は業務改善スキルを高める最強の伴走型トレーニング
今回は、kintone対面開発について、その基本からメリット・デメリット、費用、そして最も重要なパートナー選びまでを網羅的に解説しました。
対面開発は、単に短期間でアプリを開発する手法ではありません。専門家と対話し、共に考え、試行錯誤するプロセスを通じて、自社の業務を見つめ直し、改善していくための「思考法」と「スキル」そのものを習得することができます。これは、外部に丸投げするだけでは決して得られない、非常に価値のある経験です。
もしあなたが「kintoneを今度こそ成功させたい」「自分たちの手で業務を良くしていきたい」と本気で考えているなら、対面開発は間違いなく最強の選択肢となるでしょう。まずは信頼できるパートナーに、あなたの悩みや想いを相談することから始めてみてはいかがでしょうか。